煌々と、月の光が美しい。
日本では、そのお月様ごとに愛でる風習があったらしく。
十五夜(満月)だけでなく、細い細い二日月から、夜半過ぎに月待ちをすると願いが叶うといわれる二十三夜などなど。
満月をちょっと欠ける十六夜などは‘いざよい’と読まれるのをみると、日本語の美しさを実感する。
日本の月に関する風習はそまうちまたということで、西洋の月に関する事柄について。
日本でもそうだが、世界中どこでも、月は美しいのと同時に魔力を持っていると恐れられ崇められていた様子。で、多く、女神があてられるところが興味深い(太陽が男性にシンボライズ化されるためだろうが)。
ギリシア・ローマ神話では月の女神は美しい処女神で狩りの神様である。
インドでは、カーリーが月神にあてられ、残忍な魔人として崇められている。
月はラテン語でルナと言うので、狂気のことをルナシーと呼ぶのである。なので、古来から、その月の魔力を上手く受け、また狂気をさけるために様々な言い伝えや慣習があったようだ。
敬虔なキリスト教徒は、月の光がさすところでは眠らないようにしたらしい。
‘月明かりをたよりに鏡をのぞくと死ぬ’なんていうジンクスまである。これは、月が人間の生命力を吸い取ると信じられていたためのようだ。
基本的にヨーロッパでは(ひとくくりにしてしまっているが、もちろん地域などで大きく違いはあることだろう)、満ちていく月が良く、欠けていく月は不吉ととらえるらしい。
また、細い三日月はわりあい嫌われているふしがある。その時初めて見る三日月が窓越しだと不吉らしい。また、その時最初に見る三日月が右の肩越しなら幸運が、左の肩越しなら不運が訪れると言われている。これは、ヨーロッパでは古来、身体の右側は天使、左側は悪魔、と対応させていたことによる。
月を眺めながら、世界中がこの月の光に魅入るたろうかと、そんな様々なことを思い巡らせたり。
こんな書を解くのも楽しい。
角川書店 発売日:2000-07 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
ところで、書と言うて何だが…
日本でも童話作家として有名なハンス・クリスチャン・アンデルセンは、自分も子供の頃からよく呼んでいて好むが、中でも特に、子供心にも妙に惹かれていた話が、「絵のない絵本」。
月が何夜にもわたって、貧しい画家へと、その日見たことを話すと言う、とてもとても美しい物語にて。
月は美しい。
新潮社 アンデルセン(著) 発売日:1952-08 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
手にしたのは高校ぐらいだったと思うんだが…。
小さな図書室の片隅。
雑多に本が並ぶ中、一つだけ半端に飛び出した細い本があって…それがその絵本だった。
自分が手にしたその本は、古い石膏のような紙色のハードカバーで、
表紙の左上に、黒い文字で“絵の無い絵本”と。
なんだか秘密の本でも見つけたような、潜めた興奮を味わった記憶がある。
高校の図書室の本としては、人気が出なくても致し方ない本であったので、事あるごとに自分ばかりがこの本を借りて眺めていたような…。
今でもこの絵本は、ひょんな時にひょんなきっかけで、いつか手にしそうだと勝手に思っている秘密の絵本だったりする。
懐かしい本の名が出ていたので、お邪魔を…。
何気に隠れた好みの似通うが多くて嬉しいぞ。
物語とはかくも美しいものか…と思った最初だったやもしれん。
秋の夜長に、またこの本を引っ張り出して読もうかと思う。
裏路地あたりでこっそりと、いい歳した男二人(?)で、仲良くアンデルセン読むのも良いやもしれんかな(笑)
寒くなって来たので、是非に風邪などお召しにならぬよう、元気にて過ごして居て欲しく。